ミキシングエルボーを定期交換(1,000時間)しました
(HAPPY艇よりの寄稿記事)
梅雨明け以降猛暑が続き、すっかりマリーナへの足が遠いてしまい、結果 NYOCニュースのネタも不足気味になってきました。そこで、自艇ネタにはなってしまいますが、修理 メンテナンスの共有情報として寄稿させてもらいました。参考になれば幸いです。
「HAPPY」(PONAM-35)の船齢も7年目に入り、左右エンジン(アルミ合金性、M1VD-VH,370HP×2基)のアワーメータも「2023年対馬・五島列島クルーズ」を終了して1,000時間を超えてきました。「HAPPY」はアウエイの長期クルーズが中心なので、クルーズ先での艇トラブルは命取りになると考え日頃の整備はメーカーの推奨通りに行っています。
最近の猛暑は体力的にもきつく、実は夏はオフシーズンと割り切り7月20日以降のマリンライフは整備・洗浄が中心です。海上係留時代と違いマリンエアコンを使用できないので、混雑する連休、週末を避け、一回に3〜4時間程度、休憩はエアコンの効いた軽トラ内でする様にしています。ですから中々、はかどりません。作業中にはマリーナスタッフの皆さんもお会いしますが、私の熱中症リスクを考慮してくれているようで軽トラのヤード内進入を目溢ししてくれている感じがします。
今回の定期メンテメニューの中には「ミキシングエルボー」の交換が含まれます。メーカーが500時間毎の交換を推奨しているからです。「HAPPY」に付いている「ミキシングエルボー」は上記写真でわかるように3つのユニットから構成され、真ん中の黒くなっているところが排気ガスの通り道、そのパイプを下記写真の様な形で囲んで海水の通り道をつけて一体成形されています。冷却水として取り入れられた海水をここに通すことで、高温の排気ガスを冷やすという構造になっていました。アルミ製エンジンとはいってもここは鋳物素材で作られています。
一方、発電機(オナン12kw)にも「ミキシングエルボー」がついていますが、これはステンレス製でした。ステンレスの耐久性が鋳物に勝るのは当然で、2,000時間回してまだ一度も交換していません。ジェネの「ミキシングエルボー」の内部状態は別途ファイバーケーブルを差し込んで点検して貰っています。
この海水が通る穴(スリット)と排気ガスを通るパイプ間の肉厚は冷却効果を考えて薄くなっています。使用環境を考えれば厚く丈夫にしたいところでしょうが、それでは排気ガスを冷やすという目的が果たせなくなってしまいます。
また、排気ガスには軽油に含まれる硫黄成分が混じっていますが、これが高圧、高温の環境下では硫酸の結晶と化してパイプ内面にこびりつくことになります。そして、硫酸による腐食が進んでいくそうです。その穴あき安全許容時間が500時間なのでしょう。実際にはこれには安全率が付加されているので600時間ぐらいまでなら余裕で大丈夫な気がします。
「ミキシングエルボー」を3つに分解して排気ガスが通る真ん中のパイプ内面を撮影したのが下記写真です。硫酸の結晶がほぼ内面につき始めていますが、まだ穴あきまでは相当時間的余裕があるとみました。
「穴が空いてから交換ではダメなのか?」とO職員に問えば、彼曰く「仮に穴が空けば、高温の排気ガスがエンジンルーム内に漏れる、あるいは海水がパイプ内に入り込み、高熱で化反応を起こした硫酸結晶がターボユニット、シリンダーユニット等に付着し、最悪エンジン自体がお釈迦になる。高温度の排ガスがエンジンルームに充満すればセンサーが反応して同時に泡消化器も作動してしまう。その後の掃除は大変」との返事でした。
つまり、そのリスクを想定すれば、「ミキシングエルボー」の定期交換はお得な判断というロジックです。思えば、500時間ごとにこの手の問答をO氏と行い、納得してきたわけですが、やはり外見的には新品同様に見える「ミキシングエルボー」の定期交換には一抹のもったいなさ感がつきまといます。
因みに、部品費用は100万(2基分)以下、なんと前回より20%近く安いのです。部品の値段が皆上がる中で価格が下がるのはありがたいですね。「部品自体のコストダウンが理由」ではありましたが、以前なら「トヨタ→ユニマット本社→新居浜マリーナ→仁尾マリーナ→オーナ請求」という仕入れ経路から、今回は新居浜マリーナ分が抜けた事もあったのでは?と邪推しています。果たして本当のところはどうなんでしょうかね。
余談になりますが、最近は「HAPPY」の余命と私の余命が同じぐらいになってきました。加えて、船齢が重なるにつれ私のメンテナンス費用より「HAPPY」の方が余計にかかるようになっています。メンテを十分にしていない私の中古価値はここにきて暴落気味です。
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