「センガイ瀬」全速座礁?、海自艦「いなずま」
(HAPPY艇からの緊急寄稿記事)
皆さんも関心があるであろう先般の海自護衛艦「いなずま」の座礁。今尚、座礁地からの離脱ができずその地に留まっているという。潜ったダイバーの報告記事によれば、ペラが脱落、さらにシャフトが曲がってしまっているとの事。「状況からほぼ全速の30ノットで乗り上げたと思われる」という解説がなされていた。
そこで、AIS搭載艇の海上運航状況を公開している「Marine Traffic」で周防大島海域を調べてみると「Inazuma (JP)」が停船中と表示されている。
さらにその近辺には同じ海自の多用途支援船「Genkai(JP)]も停船中であることがわかった。(3番目写真)
しかし、この場所、海図を見ればはっきりと「センガイ瀬」(干潮時には洗岩状態)があると表記されており、そこには孤立障害灯標が立っている事も容易にわかるようになっている(4番目写真)。ましてや、この「いなずま」は呉基地に所属する海自艦艇である。海域はよくご存じのはず。「どうしてここで座礁?」なんとも不思議な事故である。
全速力試験運転中と解説されていたので、船速維持して舵操作のみでこの瀬近辺を通過しようとして座礁(接触して通過?)したと思われたが、航跡をざっと見ると「センガイ瀬」を通過する東西本船航路を南から北へ横切る際の座礁事故であったようである。
出港後の航跡をみると「因島」から南下して「来島海峡」を通過、「伊予灘」の広水域に入ってしばらく西航、途中から北東に大きく反転、そこを起点に増速して30ノット近くのスピードで「センガイ瀬」を左に見ながら通過し、その後急に減速、停船してしている事がわる。チャート上では「センガイ瀬」の東南20mの水深と示されているあたりを通過したように見える。
勿論、日中の事故であるから灯標存在も左側に視認しながらの余裕の通過であったはずである。となれば初めの進路設定を誤った事になる。あるいは進路設定は安全コースであったが、近づくにつれ航海計器の故障で、あるいは高速ゆえの何らかの現象で次第に危険水位域に入ってしまったのであろうか。よくあるのが小型船発見での回避操作だが、停船までの航跡は真っ直ぐなのでそれは無さそうである。
初めて瀬戸内海クルーズをした際、回航屋さんに「初めてなら本船航路から原則外れないこと、外れてうろつくと座礁してしまうよ、何しろ海図に載っていない暗礁、浅瀬も多いから」と言われたが、この海域に該当する暗礁、浅瀬でもあるのだろうか。
いずれにしても、海自護衛艦の自損事故なので、海難審判のような詳細事故情報は軍事機密と称して一般的には公開されないのかもしれない。結局、全ては憶測でうやむやして処理が終わってしまう事案になってしまうのだろうか。
話は脱線するが、戦時下にない自衛艦には船舶保険の適用があるのであろうか?また本件、メンバー各位の話もぜひ聞いてみたい。昨年ヨットリタイアした旧メンバーのT氏がいれば、氏の海自好きを重ねて、しばしの独演会となること必定である。そして、さぞかしその茶話会は賑やかになったはず。今思えば懐かしい思い出である。
合わせて今回我々が学ぶべきはこの「センガイ瀬」近辺通過の際の注意である。「HAPPY」も「上関室津」に寄港する際に何度も通過した事のある東西航路、水路であるのでこの機会に少し話をさせてもらいたい。
この場所は、3本ある本船航路が1本になる(西航の場合)海域なので本船も集まりやすく、且つ漁場なので釣り船も多い。海面状況を言うと、北側からは「舵掛礁」とその周囲にある暗礁群、海面は潮流で常にサワサワしている、そして、航路の南側には「センガイ瀬」の灯標(それ程大きくない、棒状に近い赤緑に塗られたコンクリート灯標が岩の上に立っている)、そこからかなり大きく浅瀬化して本船の東西航路に向けて広がっている暗礁群の存在がある。そんな場所である。
「いなずま」は全速試験ゆえに本船用の東西航路は外して南北に航路をとっていたので、左舷に見ての通過を企図していたはず。「センガイ瀬」も灯標が視野から消えていると、一見広い何も無い安全な広い海面に見える。漁船、本船が見えなければコースを自由に変えても大丈夫と錯覚してしまう。「土佐清水港」の沖合孤立灯標もそれに近い。東からアプローチする時、灯標と港入口の防波堤突端の間を近道すると座礁の可能性が大きくなる。不慣れなうちは遠廻りしても十分沖合を回るということだ。
0コメント